「アガベシロップ」は、血糖値の上昇度を示す指標であるGI値が低い、自然由来の甘味料。中南米原産の多肉植物「リュウゼツラン(スペイン語名:アガベ)」から作られ、お酒に詳しい方ならテキーラと同じ植物由来であることに気づく方も多いのではないでしょうか。
お酒と縁の深いアガベシロップをぜひバー業界にも取り入れていただきたい。
そんな想いで門を叩いたのが、日本を代表する名バーテンダー毛利隆雄さんが代表を務める銀座のオーセンティックバー「毛利バー」。
毛利さんに師事し、2020年にオープンした「MORI BAR GRAN」のチーフバーテンダーを勤める曽我部直樹さんにアガベシロップの味を見ていただき、風味の特性、相性の良い素材などを掛け合わせた、これまでにない3種のアガベ・カクテルが誕生いたしました。
※本カクテルはコンセプトメニューのため、毛利バーでの提供は行なっておりません。
ダイキリはキューバのダイキリ鉱山で働く鉱夫たちの間で誕生した、ラムベースのカクテルの代表格。基本的にはホワイトラム、ライムジュース、砂糖で作る。今回は砂糖をアガベシロップに置き換えて作るため、最初はラムベースで試作したところ、アガベシロップとの相性の良さからベースをラムではなくテキーラに変更。
テキーラ、フレッシュレモンジュース、アガベシロップの3つの材料だけで仕上げる非常にシンプルなカクテルで、素材をストレートに感じることができる。
同じ植物由来であるテキーラとアガベシロップが調和し、ほんのり甘く香ばしい味わいが存分に楽しめる。
テキーラ 40㎖/レモンジュース 10㎖/アガベシロップ 10㎖
ミントグリーンが美しい爽やかな一品。
元々ジンジャリータは卵白を入れてシェイクするが、今回は卵白を抜き、アガベシロップの風味を活かした上でミントの清々しさを表現した。
強い甘味度を持ちながらべったりとせず、キレの良い甘みを堪能できる。
テキーラ 30㎖/ジンジャーリキュール 10㎖/ライムジュース 10㎖
グリーンミントリキュール 5㎖/アガベシロップ 5㎖
スリムなグラスに注がれた真っ赤なビジュアルが印象的な毛利バーの代表的カクテル「プリンセスルビー」をアガベシロップでアレンジした一品。
曽我部さんはドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』で有名になったカクテル「コスモポリタン」と「プリンセスルビー」をミックスしたような味わいだと語る。
洗練された中にも甘酸っぱくてかわいらしい印象がある、お酒を飲み慣れない方にも親しみやすい一品。
テキーラ 40㎖/ライムジュース 15㎖
クランベリージュース 70㎖/アガベシロップ 5㎖
1998年に毛利バーの研修生として2年間バーの仕事を学び、その後銀座の幾つかのバーにて研鑽に励み、2007年に正式に毛利バーに入社。
2020年の毛利バーグランの開店と共にチーフバーテンダーに任命され現在に至る。
アガベシロップは甘みがくどくないので、しつこくないですね。使ってみて1番印象が強かったのが、シロップ自体にかなり風味があるので、これ自体でリキュールの代わりになるんですよね。汎用性もあると思います。
そうですね。
今回作った3種類のカクテルはそれぞれアガベの風味を活かしたものになっています。
混ざりやすいです。
作業性は問題ないです。
(味に)クセは多少あるので、
ある程度感覚的に慣れない
と難しい部分もありますが、
クセさえ知ってしまえば
結構面白い。
先ほど言ったようにリキュール
代わりにもなりますし、
はちみつみたいに溶け
にくいことはないです。
アガベの味、特徴を出すんでしたら、普通のプレーンシロップよりも多少多めにしないとアガベの味は出てきにくいですね。
アガベの量はカクテルのコンセプトによって調節すればいいと思います。
テキーラはもちろん合いますし、あとはラムも相性がいいと思います。テキーラの中でも熟成年数が長く、ちょっと色が付いていて、まったりした種類のものと調和が取れるというか。
合わなくはないんですけど、若いものとかホワイトテキーラでは、アガベのコクが強すぎて変にクセを感じてしまうかもしれないですね。
フルーツ系は、今回使ったライムやベリーなど酸味のあるものも良いですが、パイナップルとかマンゴーといったトロピカル系とか、日本の素材でいうと柿とかとも合うと思います。
柑橘系ではかぼすとか、すだちなども合わせやすいと思います。
日本のバーではまだ本格的に取り組んでいるところは多くないですが、流れとしては今後そういうところに入ってくるとは思いますね。 今もミクソロジー(※)などでは有機栽培の果物を使っていたりするところが少しずつ増えていますので… それに、テキーラ自体も昔よりはバーに浸透してきていますので、テキーラ=アガベの繋がりで、お酒を扱う業界としては入っていきやすいんじゃないかと思います。
※ミクソロジー(mixology)
「mix」(混ぜる) と「ology」(〜論)を合わせた造語。
フレッシュなフルーツやハーブ、スパイスなど自然素材を混ぜ合わせ、遠心分離機や液体窒素、燻製など様々な技法を用いて創作する、1990年代にロンドンで発祥したカクテルの新潮流。